概要
食生活の欧米化等による影響から、本邦でも高血圧、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病が増加しています。循環器病においても生活習慣病と密接に関連した疾患が多く存在し、心筋梗塞、心不全、大動脈解離等致命的な疾患に一度罹患すると、死亡に至らなくともその後生涯にわたる医療が必要となり、また要介護状態に陥りやすいことが知られています。よって、生活習慣病の予防やコントロールをすることが非常に重要であり、それにより循環器病発症を抑制し健康寿命を延ばすことが、来るべき超高齢化社会においては極めて重要と考えられます。「未病を治すかながわ宣言」は食事や運動習慣などのライフスタイルを見直すことによって,未病から健康な状態に戻していくというもので、生活習慣病の前段階を扱うといった点で将来の循環器病発症抑制とも密接に関連しているものと考えます。
上記の様に、循環器病の発症抑制を目指すためにはまず正確な現状把握が必要なことは言うまでもありません。ところが、日本全体のデータのみならず神奈川県においても、心筋梗塞や心不全の発症率、死亡率、治療形態、地域差等のデータがほとんどないのが現状です。そこで、神奈川県全体を網羅する神奈川循環器救急レジストリーを立ち上げ、まず初めに重症心筋梗塞の詳細な実態等を明らかにし、神奈川各地区間や他県との差異を明らかにし、今後の急性心筋梗塞診療の質の向上や死亡率の低下に貢献することを本レジストリーの目的としています。本レジストリーでは、生活習慣病の既往やこれまでの医療機関への受診歴等も調査し、心筋梗塞発症前の状態についても解析を行います。よって、生活習慣病の治療歴がない患者、すなわち一次予防ができていない患者の割合も知ることが可能です。
本レジストリーの骨格作りに関しては、下記に示す神奈川県下の救命救急センターを有する大学病院が参加し、またほとんどの救命救急センターを有する施設が参加しており、日本循環器学会循環器研修施設と研修関連施設にも参加を呼びかけ、現時点で52施設と非常に多くの施設が参加しています。また、緊密な連携が必要である横浜心疾患研究会、川崎CCUネットワーク、神奈川PTCA研究会とも連携しています。また、神奈川県生活習慣病対策委員会、がん循環器病対策部会、循環器疾患等分科会の協力も得て登録をすすめています。
目的
- 横浜市、川崎市を含めた神奈川県全体を網羅する神奈川循環器救急レジストリーを立ち上げ、特にこれまでデータが少ない心肺停止例を含む重症心筋梗塞の詳細な実態等を明らかにし、今後の急性心筋梗塞診療の質の向上や死亡率の低下に貢献することを目的としています。
- 生活習慣病の既往や医療機関受診歴についても調査し、心筋梗塞発症前の状態を明らかにする。生活習慣病の管理をすることにより、心筋梗塞の発症が抑制できるかも検討します。
- 予後調査を行い、その後の転帰も調査することにより、死亡の有無のみならず、社会復帰率、要介護等の現状を把握します。
- 神奈川県内でも地域により医療事情がかなり異なり、それらの比較を行うことでそれぞれの長所や短所を明らかにし、また、すでにレジストリーが行われている東京都、宮城県、熊本県をはじめとする他道府県との比較を行います。
- 将来的には各市町村の救急隊とのデータの共有を行い、より迅速な患者受け入れや重症度に応じた施設選定等に役立つことも目標とします。
- 急性心筋梗塞のみならず、心不全を含む循環器救急疾患全体を網羅するレジストリーにすることを予定しています。
実施方法
- 症例登録方法:2015年10月1日より急性心筋梗塞患症例のweb登録を開始しています。
- 参加施設:施設登録に示す神奈川県下の救命救急センターを有する大学病院が参加し、またほとんどの救命救急センターを有する施設が参加しており、日本循環器学会循環器研修施設と研修関連施設にも参加を募集し、現時点で52施設が参加しています。
- 協力組織:緊密な連携が必要である横浜心疾患研究会、川崎CCUネットワーク、神奈川PTCA研究会とも連携しています。また、神奈川県生活習慣病対策委員会がん循環器病対策部会循環器疾患等分科会の協力も得て登録をすすめています。また、文部科学省の科学研究費助成事業(基盤C一般)に採択され資金提供をうけています。
世話人
世話人(五十音順)
教授 明石嘉浩 |
教授 阿古潤哉 |
教授 伊苅裕ニ |
主任教授 田村功一 |
神奈川県生活習慣病対策委員会 がん循環器病対策部会 循環器疾患等分科会